Q:  インターネットに、「ゲーテの名言」として「自分自身を信じてみるだけでいい。きっと、生きる道が見えてくる。」という言葉が載っていました。これは、ゲーテがどこで言っているのでしょうか? それと、これは、なんか単純なことを言っているだけのようにもみえるのですが、ゲーテは本気でそう思っていたのでしょうか?

A: 最初のご質問の出典は、おそらく、ゲーテの『ファウスト』第1部「書斎」の場の最後のほうでメフィストフェレスが言っているセリフを「超訳」したものと思われます。
ドイツ語の原文では、Sobald du dir vertraust, sobald weißt du zu leben. と記されています。

後のご質問は難問です。「名言」は、そう思われる方の主観であり、そう思わない方もおられるからです。また、とりわけインターネットでくりかえし引用・転用がくりかえされるうちに、もともとは単純な言葉が意味深な言葉に変容してしまう場合もございます。
ちなみに、問題の個所は、メフィストフェレスがファウストにむかって言うセリフですから、ゲーテ自身がそう信じていたかどうかはわかりません。戯曲のセリフと著者との関係をどうとらえるかの難問です。

以下に、すこし長くなりますが、問題の部分の日本語訳(単行本として公開されたものにかぎる)をご紹介しますので、ご自身でご判断ください。ファウストをただ励ますだけの意味に訳している場合もありますし、また、逐語訳に近い形で訳している場合等々、訳者のさまざまな解釈が反映されています。


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