A: おたずねの文に該当するドイツ語を、当館所蔵の数種類のドイツ語版ゲーテ全集で調べましたが、この内容に合致するドイツ語文は(いまのところ)発見できていません。
なお、「天に星/地に花/人に愛」(縦書き、句読点なし)は、武者小路実篤が1948~9年ごろ書いた詩文(求められて即興で色紙に書いたのが初めという説もある)として、たとえば『武者小路実篤全集』第十一巻(「詩千八百」、小学館、1989年)等に再録されています。
しかし、『太陽』(明治29〔1896〕年8月号)に初出の「『今戸心中』と情死」(『樗牛全集』第二巻、博文館)という文章のなかで、高山樗牛が、
天にありては星、地にありては花、人にありては愛。(全文に傍点の総ルビ)と書いていますので、武者小路は当然読んでいたはずで、彼が「天に星・・・」と書いたときは、この文章を自分流に若干アレンジしただけだったのかもしれません。
【注】→
高山樗牛の原文(クリック)
そのため、普通に考えられるのは、
この文の原典は高山樗牛であるということですが、依然として、ゲーテないしは他の誰かがこの内容にあたる文章を書き、高山と武者小路が、それぞれ別の経路で類似の翻訳にいたったという可能性は残ります。
今後、当館所蔵の全集に含まれていないゲーテのテキストから、当該の原文が発見される可能性もありますが、当面は、
この言葉はゲーテのものではない、と言わざるをえません。