今月のゲーテQ&A/東京ゲーテ記念館

Q: 昭和生まれの父が愛読していたゲーテの本の題名が知りたいです。あいにく、処理した遺品のなかにはいっていたらしく、「オレンジ色の文庫本」で「若きウェルテルの悩み」だったらしいということしかわかりません。


A:

昭和あるいは昭和以前に発行された『若きウェルテルの悩み』でオレンジ色の「文庫本」はないと思います。

おそらく、それは、泰豊吉訳の『若きヱルテルの悲み』(新潮社、大正6年刊)ではないでしょうか?

これは、「文庫本」ではありませんが、縦155mm×横115mm×厚15mm程の特殊サイズで、ほぼ文庫本にちかい大きさです。
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秦豊吉のこの訳本は、大正6年(1917年)の初版以来、版を重ね、多くの読者に読まれたようです。 昭和44年(1969年)に帝国劇場で上演された菊田一夫演出・石坂浩二・那智わたる他出演の舞台『若きウェルテルの悲しみ』の台本には、この秦豊吉の訳本が使われています。

なお、本書よりも大きなサイズで「オレンジ色」の「ウェルテル」訳では、もう一冊、木村謹二訳『若きウェルテルの悩み』 (昭和13年刊、友朋堂)があります。しかし、サイズはが「四六判」(128mm×188mm)ですから、「文庫サイズ」よりもだいぶ大きくなります。

秦豊吉の訳書は、国会図書館等の図書館で閲覧できますし、古書店やオークションなどでも見かけますので、確認してみてください。

東京ゲーテ記念館 資料室